今回は、コンポジットレジン修復にファイバーを併用することについて考察してみたいと思います。
目次
コンポジットレジンは、モノマーが触媒によって活性化されて、重合反応をして、ポリマーを形成することで固まります。
コンポジットcompositeとは、「複合」という意味で、コンポジットレジンは、日本語訳で「複合レジン」ともいい、コンポジットレジンとは、レジンに何かを混ぜているという意味です。
レジン単独だと、重合反応でモノマーどうしがギュッと縮んでしまうので(重合収縮 polymerization shrinkage)、歯に詰めたときに、歯とレジンポリマーの間に隙間ができやすいです。
重合収縮を抑えるために、レジンに、シリカなどのセラミック系材料を粉砕した無機フィラーというものを混ぜて作ったものが、コンポジットレジンになります。
1)レジン成分:Bis-GMA、UDMAなど
2)無機フィラー成分:シリカなど
フィラーを入れて重合収縮を抑えたものの、それでも重合収縮がゼロになるわけではありません。
それでは、重合収縮は具体的に何が悪いか?
まず、コンポジットレジンの使い方を確認してみると、
1)虫歯を取る
2)虫歯を取ってできた穴に、歯の接着剤を塗る(樹脂含浸層hybrid layerの形成)
3)コンポジットレジンを歯の穴に詰める
4)光重合させて、コンポジットレジンを重合させて、歯に接着させる
コンポジットレジンは、歯の接着剤によって、歯の表面に接着させるわけですが、
コンポジットレジンが重合する時に縮むことで、コンポジットレジンは、歯から離れようとします。
そうなると、歯の接着剤の層が常に引っ張られる状態になり、歯とコンポジットレジンとの間に隙間ができやすくなります。(コントラクションギャップcontraction gap)
どういう時に、特に重合収縮の影響が大きいか?
Cファクターという概念がありますが、この値が大きいと、重合収縮による収縮応力が大きいといえます。
Cファクターがどういう概念かというと、
・C-factor = 接着面積/非接着面積
・重合収縮応力の度合いを表す
・コンポジットレジンが歯と接している面積が大きいほど、重合収縮応力も大きい
下の写真は、根管治療後の支台築造時の様子を表しています。
支台築造時のコンポジットレジンは、歯と接着する面積が大きくなりますので(Cファクターが大きい)、重合収縮応力へのケアを考える必要があります。
重合収縮の悪影響を抑えるための工夫には、いくつの方法がありますが、
今回は、タイトルの通り、ファイバーを併用することによる重合収縮応力への効果を考えてみたいと思います。
ここでいうファイバーというのは、通常のファイバーポストなどの棒状のものではなく、網目状の特殊なポリエチレンファイバーのことをいい、商品名は「リボンドRibbond」です。
とても優れたもので、私は特に、歯髄保存療法後の象牙質即時封鎖(IDS)もしくは遅延封鎖や根管治療後の支台築造に絶賛活用中です。
このファイバーの活用は、どういうメリットがあるか、その活用上のメリットを裏付けるエビデンスをまずいくつかご紹介します。
これらの文献では、
1)窩壁にファイバーを併用することで、Cファクターの高い窩洞での接着強さが有意に向上した(vs バルク充填(一括充填))
2)窩壁のファイバーは、重合収縮応力を吸収し、接着表面を重合収縮応力から守る役割をする
とまとめています。
なので、
1)重合収縮応力の緩和による:接着強さの向上、封鎖性の向上
2)(今回の記事ではあまり触れていませんが)鉄筋コンクリート様補強効果による:破折抵抗の向上
リボンドの活用、臨床経験上もとても実感していて、接着歯科の臨床幅がもっとアグレシッブに増えてきました。
コンポジットレジン修復や支台築造以外も、絶望的に揺れている歯の固定、歯根が割れている歯の接着、何回も割れてくるコンポジットやセラミックの補修など、リボンドでかなりリカバリーできています。
みなさんもぜひ活用しましょう!