歯医者のどんです!
今回は、アメリカ歯内療法学会(Association of American Endodontists, AAE)が推奨している歯髄状態や根尖部状態の診断に用いる用語についてご紹介します。
目次
まず、根管治療を行う前に、根管治療が必要かどうかを診断する必要があります。
根管治療が必要だと判断すべき状態というのは、
・歯髄の強い炎症(虫歯による感染・外傷による)
・歯髄の壊死
・歯髄由来の根尖部炎症
になります。
根管治療が必要かどうかは、患者さんの自覚症状、歯医者による誘発症状、歯髄診、エックス線画像所見で総合的に判断します。
根管治療が必要かどうかを判断する材料としては
1)患者さんの自覚症状:
- 自発痛:何もしなくても痛い
- 冷水痛:冷たい水やアイスなどが強くしみる・しみてから長引く感じがある
- 温熱痛:暖かいもの(味噌汁)がしみる
2)歯医者による誘発症状:
- 冷水痛とその持続時間
- 温熱痛とその持続時間
- 打診痛:歯を叩いてみる
- 根尖部圧痛:根の尖端部を触ってみる
- 咬合時痛:綿などの柔らかいもの・割り箸などの硬いものを噛ませてみる(咬合時痛)
3)歯髄診
- 寒冷診:冷却スプレーで冷やしたスポンジーを歯に当てて、その反応性や持続時間をみる
- 電気診:歯に電気を流して反応するかどうかをみる
- マイクロスコープの拡大視野による視診:歯髄の状態を拡大視野下で直視して、歯髄の血流状態などを確認する
4)エックス線画像
- デンタルエックス線:従来の口内法撮影、二次元画像
- CBCT:三次元画像
AAE Concensus Conference(AAEコンセンサス会議、もしくはAAE統一見解会議)が推奨している診断名では、臨床症状やエックス線画像所見を元に、歯髄の状態(Pulpal)と根尖部の状態(Apical)に分けて、それぞれ診断名をつけます。
推奨されている診断名は以下となります。
1)正常歯髄 Normal pulp:症状がなく、歯髄診に正常に反応
2)可逆性歯髄炎 Reversible pulpitis:歯髄炎があるが、正常歯髄に戻れる状態
3)症候性非可逆性歯髄炎 Symptomatic irreversible pulpitis:正常歯髄に戻れない状態、長引く温熱痛 lingering thermal pain・自発痛 spontaneous pain・関連痛 referred painなどを認める
4)無症候性非可逆性歯髄炎 Asymptomatic irreversible pulpitis:正常歯髄に戻れない状態、症状はないが、う蝕やう蝕切削・外傷によって誘発された炎症を有する
5)歯髄壊死 Pulp necrosis:歯髄が死んでしまっている、歯髄診に反応しない
6)既根管治療 Previously treated:すでに根管治療の既往があり、根管貼薬剤でない充填材によって根管充填がされている
7)既根管治療開始 Previously initiated therapy:断髄や抜髄などの根管治療がすでに行われている
1)正常根尖組織 Normal apical tissues:打診痛や圧痛を有しない正常な根尖組織、歯槽硬線が連続性を保っていて、歯根膜腔が均一である
2)症候性根尖性歯周炎 Symptomatic apical periodontitis:根尖部の炎症によって、咬合時や打診または根尖部触診に対する痛みを有する
3)無症候性根尖性歯周炎 Asymptomatic apical periodontitis:歯髄由来の根尖部の炎症を有するが、臨床的症状はない
4)急性根尖膿瘍 Acute apical abscess:歯髄感染や歯髄壊死による急性炎症で、自発痛、根尖部の膿形成・腫脹を認める
5)慢性根尖膿瘍 Chronic apical abscess:歯髄感染や歯髄壊死による慢性炎症で、違和感、及び瘻孔sinus tractからの排膿を認める
6)硬化性骨炎 Condensing osteitis:広範性のエックス線不透過性の根尖病変で、軽度low-gradeの炎症刺激による骨反応
詳しくは、AAE Consensus Conference Recommended Diagnostic Terminologyを確認してみましょう!(リンクをクリックすると、オリジナル版のPDFファイルが閲覧できます。)
こういった診断名はグローバルスタンダードになってきていますので、歯科医師のみなさんはもちろん、根管治療に興味のある方も理解しておくといいんじゃないですかね!
それでは、また!