こんにちは、歯医者のどんです。
今回は、根管治療で使われているMTA(Mineral Trioxide Aggregate)についてみてみたいと思います。
目次
まず、MTAは、MTAの粉末を、水で混ぜて、使うんですが、
どういう時に使うかみてみましょう
- 露出した歯の神経を保護する:歯髄保存療法 vital pulp therapy
- 歯の根に開いた穴を塞ぐ:穿孔修復 perforation repair
- 歯の根の先端から根管治療をした後、根の先端から根管を塞ぐ:逆根管充填 retrofilling
- 広く開いた根尖の根管充填
- 根未完成で歯髄壊死に陥った永久歯の歯髄再生療法:regenerative endodontic treatment, revascularization
などで使われています。
特に最近、MTAは歯髄保存療法で大活躍中ですが
それ以外にもいろいろ使う場面がありますが、共通するところとしては、
歯の中が、歯の外に露出していて、それを封鎖する
ときに、MTAを使うということになります。
どうして、こういうときにMTAが有効かというと、
MTAは、
- 水と混ざって、水和反応で少し膨張するので、封鎖性が良くて、しっかり封鎖してくれる
- 生体親和性が良いので、歯の神経(歯髄)や歯周組織に接していても大丈夫
- 固まる時に水酸化カルシウムを出すので、抗菌作用を発揮する
といった特徴を持っているからです。
MTA(Mineral Trioxide Aggregate)の組成は
- ポルトランドセメント:ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、アルミン酸カルシウムなど
- 造影剤:酸化ビスマスもしくは酸化ジルコニウムもしくは酸化タンタル・タングステン酸カルシウム
です。
元祖MTAであるプロルートMTA(ProRoot MTA)は、だいたいポルトランドセメント7:酸化ビスマス3の割合で混ぜたものでしたが、歯の変色問題などがあったので、改良して、現在の白いMTAに至りました(最初のプロルートは灰色でした)。
ポルトランドセメントは、コンクリートを固める材料で、ホームセンターでも簡単に手に入る材料ですが、MTAに使う時は、さすがに医療用として精製して作ったもので、工業用とは区別します。
最近は、MTAの有効成分であるケイ酸三カルシウムを高純度の原料から合成して作った後発製品もたくさん出ており、こういうったケイ酸三カルシウムを主成分とする材料を、
バイオセラミックス
もしくは
水硬性ケイ酸カルシウムセメントhydraulic calcium silicate cement
とも呼んでいます。
バイオセラミックスという言い方がよくありますが、厳密には、バイオセラミックといえる材料の範囲が広すぎるので、MTA系材料だけを限定して、「バイオセラミックス」と呼ぶのは、あまり適切ではない言い方だと、個人的には思っています。
MTAの特徴をよく表している、「水硬性ケイ酸カルシウムセメント」の方が、MTA系セメントを総称する適切な表現なんじゃないかと思っています。
やはり、MTAは水で混ぜて、水和反応を起こして固まることで、その効果を発揮していると思うので、水硬性ケイ酸カルシウムセメントが適切ですし、
逆にいうと、MTAの粉末をレジンに添加して固める材料などは、個人的には、MTAの本来の性質とは違うかなと思っています(TheracalやスーパーボンドMTAなど)。
このように、水で練和したMTAこそが、MTA本来の効果を発揮すると思っています。
水和反応の過程で、アルカリ性を示して、抗菌効果を発揮しますし、カルシウムを局所にたくさん放出して、歯髄や歯周組織に生理活性を起こしていると思っています。
今回は、MTAについてみてみました!
根管治療領域では非常に優秀な材料として活躍中ですが、
MTAはあくまでも最後の封鎖材で、MTAだけで歯を治すわけではないので、しっかりマイクロスコープによる精密な根管治療や歯髄保存療法ができる先生に使ってもらわないといけないかなと思います。
それでは、また!
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