歯髄保存療法から歯の修復まで

歯の神経を残す:歯髄保存療法

歯の神経に接近した虫歯の除去はとてもシビアな作業です。

なので、大切な歯の神経が露出しても、しっかり残せるように、歯科用マイクロスコープの拡大視野の支援下で作業することが望ましいでしょう。

深い虫歯を発見しました。スプーンエキスカバーターという手用器具で柔らかくなった軟化象牙質を慎重に取っていきます。

虫歯の除去によって露出した歯の神経は、きれいに消毒して、保護してあげないといけません。

消毒には、次亜塩素酸ナトリウム溶液、神経の保護には、MTAセメントが使われます。

虫歯をしっかり除去し、露出した神経は低濃度(1〜2%)の次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。
露出した歯の神経を滅菌精製水で練ったMTA(Mineral Trioxide Aggregate)で保護します

土台を固める:レジンコーティング・象牙質封鎖(IDS)

歯の神経を保護したあとは、虫歯にならないように、しっかり虫歯の穴を塞いであげる必要があります。

歯の接着剤をフル活用して、コンポジットレジンという歯科用樹脂を使って、しっかり封鎖します。

今回は、コンポジットレジンを用いて、まずは土台を固めました。

MTAで神経を保護したあとの土台づくり

歯髄保存療法後、象牙質即時封鎖(Immediate Dentin Sealing, IDS)が可能な場合は、まず、未硬化MTAの上に、直接コンポジットレジンを盛ります。MTAが徐々に固まることで、コンポジットレジンと接合してくれます。

その後、象牙質接着剤を塗布して、コンポジットレジンを盛って、象牙質の封鎖をはかりながら、土台を立てていきます。

コンポジットレジンの重合収縮を抑える目的で、リボンどというポリエチレンファイバーを併用することも、封鎖性の向上につながるかと思います。

歯の形を修復する:オーバーレイ修復

コンポジットレジンで土台を作ったあとは、歯の形を回復して、しっかり噛めるようにして、歯としての機能を回復させます。

今回の場合は、咬頭(奥歯の山になっていて尖っている部分)が薄くなっていることや、根管治療が必要になる可能性から噛む力によって歯が割れないように、部分的にかぶせるタイプの「オーバーレイoverlay」修復(すべての咬頭を修復物で被覆する)を選択しました。

オーバーレイ修復物を歯に接着させる様子

オーバーレイは、歯の接着剤と相性が良い材質で作ることが望ましいです。

最近は、白くて耐久性も良い、イーマックス(二ケイ酸リチウム lithium disilicate)という材質を好んで使っています。

保険診療で使えるキャドキャム(CAD/CAM、コンポジットレジンブロックを削り出して作るもの)も悪くないです。

また、イーマックスやキャドキャムを、加熱した高強度コンポジットレジンを使って歯にくっつけると、取れにくくて、歯と修復物の間の劣化も少なく、最近は非常によく活用しています。

今回は、歯髄保存療法したあとの歯の修復法についてみてみました。

それでは、またです!

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